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Neyman-Pearson(ネイマン・ピアソン)の基本定理

一般

確率ベクトル(標本確率変数) \boldsymbol{X} = (X_1,X_2,\ldots,X_n)は分布P_{\theta}, \theta  \in \Thetaに従うとし、
分布P_\thetaの確率(密度)関数をf(\boldsymbol{x};\theta) (= \prod_{i=1}^n f(x_i;\theta))とする。
この時、検定問題

\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
H_0 : \theta = \theta_0 (単純仮説) \\
H_1 : \theta = \theta_1 (単純仮説)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

に対する有意水準\alpha(0\le \alpha \le 1)の最強力検定 \varphi_0(\boldsymbol{x})は次式で与えられる。
(※\varphi(\boldsymbol{x})のことを検定関数という)

\begin{eqnarray}
\varphi_0(\boldsymbol{x}) =
\left\{
\begin{array}{ll}
1 & if \;\; f(\boldsymbol{x};\theta_1) > kf(\boldsymbol{x};\theta_0) \\
\gamma & if \;\; f(\boldsymbol{x};\theta_1) = kf(\boldsymbol{x};\theta_0) \\
0 & if \;\; f(\boldsymbol{x};\theta_1) < kf(\boldsymbol{x};\theta_0)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

ここで、定数 \gamma(0 \le \gamma \le 1), k (\ge 0)は次式から定まるものである。
\begin{equation}
E_{\theta_0} ( \varphi(\boldsymbol{X}) ) = \alpha
\end{equation}


以上がNeyman-Pearsonの基本定理である。これだけではなんのことかわからないので、もう少しわかりやすく書いていくことにする。

つまりは...

大きさnの無作為に抽出された独立な標本X_1,X_2,\ldots,X_nについて、帰無仮説、対立仮説共に単純仮説である検定問題

\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
H_0 : \theta = \theta_0 (単純仮説) \\
H_1 : \theta = \theta_1 (単純仮説)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

に対して、最強力棄却域R^*はが以下で与えられる。

\begin{equation}
R^* = \{ (X_1,X_2,\ldots,X_n) ; \frac{\prod_{i=1}^n f(x_i;\theta_1)}{\prod_{i=1}^n f(x_i;\theta_0)} > c \} , c>0
\end{equation}

ただしこの時、cは以下により決まる(\alpha有意水準)

\begin{eqnarray}
P((X_1,X_2,\ldots,X_n) \in R^* | \theta = \theta_0) & = & P(第1種の誤りがおこる) \\
& = & \int \ldots \int_{R^*} \prod_{i=1}^n f(x_i;\theta_0)dx_1 \ldots dx_n \\
& = & \alpha
\end{eqnarray}

上記二つを行うことで最強力棄却域が求まることを、Neyman-Pearsonの基本定理は言っているのである。
この最強力棄却域の基づく検定のことを最強力検定と呼び、Neyman-Pearsonの基本定理を用いることで、
帰無仮説、対立仮説がともに単純仮説の際、最強力検定を求めることができるのである。

以下のことを覚えておきたい。
検定関数\varphi(\boldsymbol{x})を決める\Leftrightarrow棄却域Rを決める

対立仮説が複合の場合でも活躍するNeyman-Pearonの定理

Neyman-Pearsonの定理は基本単純仮説同士の検定に用いられるが、対立仮説が以下のような場合にも応用することができる。
帰無仮説H_0 : \mu = \mu_0
対立仮説H_1 : \mu > \mu_0 または \mu < \mu_0
このような対立仮説の検定問題の場合、\mu > \mu_0(または \mu < \mu_0)を満たすような任意の\mu_1を用いて
単純仮説に帰着することで、Neyman-Pearsonの基本定理を応用することができる。

参考文献

鈴木武・山田作太郎(2006)『数理統計学-基礎から学ぶデータ解析-』内田老鶴圃.
国沢清典(2012)『確率統計演習2-統計』培風館.
稲垣宣生(2013)『数理統計学』(数学シリーズ)裳華房.