統計・確率のお勉強

統計学を中心に色々勉強するブログ

カイ二乗分布の自由度を大きくしていくと同じ平均, 分散の正規分布と変わらなくなる話

カイ二乗分布

カイ二乗分布は大丈夫だと思いますが,  X_i \sim N(0, 1) のとき,

$$
\sum_{i=1}^n X_i^2 \sim \chi_n^2
$$

となります. 自由度 nカイ二乗分布に従うということです.

カイ二乗分布正規分布 N(n, 2n) に近づいていく様子

今回は自由度 n が大きくなるにつれて, カイ二乗分布が同平均, 同分散の正規分布に近づいていく様子をgifアニメ化してみました.

その結果がこちらです.

f:id:doratai:20171116135147g:plain

ここでは, 自由度を1から100まで動かしています. 自由度が大きくなるにつれて正規分布と一致していくのがわかります.

ソースコード

Jupyter 上で動かしました. アニメーションを作成するプログラムではなく, インタラクティブにnの値を変えることができ, そのときのカイ二乗分布(緑の破線)と正規分布(赤の曲線)の密度関数と, カイ二乗分布から得られた乱数をもとに作ったヒストグラムが描画されます.

%matplotlib inline
import matplotlib.pyplot as plt
from ipywidgets import interact
import numpy as np
from scipy.stats import norm, chi2

plt.style.use('ggplot')

bins = 100

@interact(n=(1,200))
def plot_chisquare(n=1):
    np.random.seed(0)
    data = np.random.chisquare(n, 10000)
    
    x = np.linspace(data.min(), data.max(), 1000) 
 
    param = norm.fit(data)
    pdf_fitted = norm.pdf(x, loc=param[0], scale=param[1])
    pdf = chi2.pdf(x,n)
    plt.plot(x, pdf_fitted, 'r-', label='normal pdf')
    plt.plot(x, pdf, 'g--', label='chi2 pdf')
    plt.hist(data, bins, color='pink', density=True)
    if n== 1:
        plt.ylim(0, 1)
    plt.title('Chi-square distribution with n degrees of freedom')
    plt.legend(loc='best')
    plt.show()

統計学を学ぶのにおすすめの問題集3冊

統計学を勉強しようと考えている方向けにレベル別におすすめの問題集を紹介する。統計検定やアクチュアリー等を考えている人にも十分なレベルを備えている問題集達なのでぜひ参考にしてください。

※統計検定準1級以上は範囲が広がるためここにある問題集だけでは少し不足かも...

[初級] 弱点克服 大学生の確率・統計 著者:藤田岳彦

統計学を勉強し始めたならまずはこの問題集に手を付けるのがいいと思います。高校生向けの問題集のようなデザインでとっつきやすく、確率統計の要点をしっかりおさえている、初学者にうってつけの問題集です。確率統計を勉強したことがある人なら必ず何処かで手にしたことがあるはず。初学者でなくとも、一度は通してやっておきたい一冊です。

[中級] 明快演習 数理統計 著者:小寺平治

弱点克服で確率統計に慣れたら次にやるべきはこの「明快演習 数理統計」です。難易度は弱点克服とそんなに変わりません。こちらのほうが、タイトル見れば分かる通り、数理統計が中心となっており、数理統計学の関する、いわば王道の問題を扱っています。受験的にいうと、数理統計学の頻出問題集のような感じです。統計学関連の問題を一通り網羅しているので、ここまでやればまず大学の数理統計学の授業で困ることは無いと思います。アクチュアリー、統計検定もここまでやればもう十分、といったレベル。

[上級] 確率統計演習2-統計- 著者:国沢清典

上記2冊をやってまだ物足りないという方がやるべきはこの一冊。結構レベルが上がります。数理統計の専門書すら扱ってないようなマニアックなものもあり、これ一冊でかなりの範囲を網羅可能。難しそうな見た目の割に全ての問題に解答がついており、問題集としてだけでなく参考書としても利用できるレベル。数理統計で難しめのレポート出されても、国沢統計を調べれば結構書けたりする。持っておくと結構役に立つ名著。ちなみにこれは「2」とありますが「確率統計演習1-確率-」もあります。

標本(不偏)分散の期待値, 分散[正規分布]

正規分布に従う確率変数の期待値, 分散等は統計に関連する本ならばまず間違いなく載っています. しかし, 標本(不偏)分散の期待値, 分散となってくるとなかなか取り扱っている本もサイトも少ない気がします. 定義から求めればいいといえばいいのですが, バカ正直に計算しようとすると結構大変です. 今回は標本分散の期待値, 分散について見ていこうと思います.

標本分散, 標本不偏分散の定義

標本分散S^2と標本不偏分散U^2を次のように書くことにします.

\begin{eqnarray}
S^2 &=& \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} (X_i - \bar{X})^2 \\
U^2 &=& \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n} (X_i - \bar{X})^2
\end{eqnarray}

モーメント

期待値の計算に際し, モーメントを用いるので, 正規分布積率母関数と, 1次と2次モーメントを計算おこうと思います. 正規分布N(\mu, \sigma^2)に従う確率変数X積率母関数M_X(t) = \exp(\mu t + \sigma^2 t^2 /2)であるので,


E(X) = \frac{d}{dt}M_X(t)|_{t=0} = (\mu + \sigma^2 t) e^{\mu t + \sigma^2 t^2/ 2}|_{t = 0} = \mu
E(X^2) = \frac{d^2}{dt^2} M_X(t)|_{t=0} = \sigma^2 e^{\mu t+\sigma^2 t^2/2} + (\mu + \sigma^2 t)^2 e^{\mu t + \sigma^2 t^2/2}|_{t=0} = \mu^2 + \sigma^2

ちなみに, 標本平均\bar{X}\sim N(\mu, \sigma^2/n)より, そのモーメントは,
 \displaystyle
E(\bar{X}) = \mu \\
E(\bar{X}^2) = \mu^2 + \frac{\sigma^2}{n}

標本分散

まず初めに標本分散の方の期待値を見ていこうと思います.

期待値

期待値の定義から,

\begin{eqnarray}
E(S^2) &=& E \left[ \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2 \right] \\
&=& E\left[ \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i^2 - \bar{X}^2\right] \\
&=& \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} E(X_i^2) - E(\bar{X}^2)
\end{eqnarray}

先程求めたモーメントを考慮すると,

 \displaystyle
E(S^2) = \frac{1}{n} \cdot n( \mu^2 + \sigma^2 ) - (\mu^2 + \frac{\sigma^2}{n})
       = \sigma^2 - \frac{\sigma^2}{n}
       = \frac{n-1}{n} \sigma^2
となる.

分散

続いて分散について見ていく. ここでは, \frac{\sum(X_i - \bar{X})^2}{\sigma^2} = \frac{nS^2}{\sigma^2} \sim \chi_{n-1}^2となる事実を用いる.
自由度n-1カイ二乗分布の分散が2(n-1)であることから,(環境の都合で \sigma^2 = s^2で表記します.)
\begin{eqnarray}
V(\frac{nS^2}{s^2}) &=& 2(n-1) \\
\frac{n^2}{s^4}V(S^2) &=& 2(n-1)\\
V(S^2) &=& \frac{2(n-1)s^4}{n^2}
\end{eqnarray}
よって(表記を戻すと)V(S^2) = \frac{2(n-1)\sigma^4}{n^2}になることが分かる.

※なんか,はてなでeqnarray環境使うとギリシャ文字がうまくいかないんだよなあ...

標本不偏分散

続いて標本不偏分散を見ていきます. といってもやることはほとんど同じ. 標本不偏分散のほうが期待値も分散もきれいになります.

期待値

先ほどと同様に定義からでも求まりますが, U^2 = \frac{n}{n-1}S^2の関係を用いれば,

 {\displaystyle
E(U^2) = E \left( \frac{n}{n-1} S^2 \right) = \frac{n}{n-1} E(S^2) = \frac{n}{n-1} \frac{n-1}{n} \sigma^2 = \sigma^2
}

標本不偏分散なので当然といえば当然.

分散

標本分散の時と同様に\frac{(n-1)U^2}{\sigma^2} \sim \chi_{(n-1)}^2であることを用いる.
{\displaystyle
V(\frac{(n-1)U^2}{\sigma^2}) = 2(n-1) \\
\frac{(n-1)^2}{\sigma^4} V(U^2) = 2(n-1) \\
V(U^2) = \frac{2\sigma^4}{n-1}
}
となる.

※eqnarray環境使わなかったため見た目が悪くなってます.


分散の分散を馬鹿正直にやると4次モーメントまで考えなくてはならなかったり, 式もかなり煩雑になるので, カイ二乗分布から持ってくる方が簡単で便利だと思います.
国沢統計を読んで見ると「4次モーメントを考えると...」という記述があってやろうとしたのですが途中で挫折しました...

Daftでグラフィカルモデルを作成してみる[Python]

森北出版の「Pythonで体験するベイズ推論」を読み進めていたら、2章で、Pythonのdaftというライブラリを用いて、グラフィカルモデルを作っていたのですが、そのソースコードは載っていなかったので自分で作ってみました。

作ったのは以下のグラフィカルモデル

f:id:doratai:20170605163828p:plain


参考にしたのは次のサイト。
daftでグラフィカルモデル
このサイトがかなり詳しく説明してくれています。

ソースコード

import daft
from matplotlib import rc
rc("font", family="Ricty", size=15)
rc("text", usetex="True")

pgm = daft.PGM(shape=[6,6])

# Nodes
pgm.add_node(daft.Node("alpha", r"$\alpha$", 4, 5)) # 名前 ラベル 座標
pgm.add_node(daft.Node("tau", r"$\tau$", 1, 4.5))
pgm.add_node(daft.Node("lambda_1", r"$\lambda_1$", 3, 4))
pgm.add_node(daft.Node("lambda_2", r"$\lambda_2$", 5, 4))
pgm.add_node(daft.Node("lambda",  r"$\lambda$", 2, 3))
pgm.add_node(daft.Node("obs", "obs", 2, 2, observed=True))

# Edges
pgm.add_edge("alpha", "lambda_1")
pgm.add_edge("alpha", "lambda_2")
pgm.add_edge("tau", "lambda")
pgm.add_edge("lambda_1", "lambda")
pgm.add_edge("lambda_2", "lambda")
pgm.add_edge("lambda", "obs")

pgm.render()
pgm.figure.savefig("pymc_p43.png")

多項分布

多項分布

基本性質

確率関数
 \displaystyle
f(x_1,\ldots,x_k) = \frac{n!}{x_1!\cdots x_k!} p_1^{x_1} \cdots p_k^{x_k}
期待値
 \displaystyle
E(X_i) = np_i
分散
 \displaystyle
V(X_i) = np_i(1-p_i)
共分散
 \displaystyle
Cov (X_i,X_j) = -np_i p_j

確率関数

1回の試行でk通りの可能な結果A_1,\ldots,A_kのいずれか1つのみが生じ、P(A_i) = p_i(i = 1,\ldots,k)とする。この試行を独立にn回繰り返したときに、A_iが生じる回数をX_iとするとき、X_1,\ldots,X_kの同時分布を多項分布といい、その確率関数は以下で与えられる。
$$
f(x_1,\ldots,x_k) = \frac{n!}{x_1!\cdots x_k!} p_1^{x_1} \cdots p_k^{x_k}
$$

期待値

\begin{eqnarray}
E[X_i] &=& \sum_{i=1}^k x_i \frac{n!}{x_1!\cdots x_k!} p_1^{x_1} \cdots p_k^{x_k} \\
&=& \sum_{i=1}^k \frac{n \cdot (n-1)!}{x_1!\cdots (x_i - 1)! \cdots x_k!}p_i \cdot p_1^{x_1} \cdots p_i^{x_i-1}\cdots p_k^{x_k} \\
&=& np_i \sum_{i=1}^k \frac{(n-1)!}{x_1!\cdots (x_i - 1)! \cdots x_k!} p_1^{x_1} \cdots p_i^{x_i-1}\cdots p_k^{x_k} \\
&=& np_i
\end{eqnarray}

分散

分散を求めるためにまず次の期待値を計算する。
\begin{eqnarray}
E[X_i(X_i - 1)] &=& \sum_{i=1}^k x_i(x_i - 1) \frac{n!}{x_1!\cdots x_k!} p_1^{x_1} \cdots p_k^{x_k} \\
&=& \sum_{i=1}^k \frac{n(n-1) \cdot (n-2)!}{x_1! \cdots (x_i-2)! \cdots x_k!} p_i^2 \cdot p_1^{x_1} \cdots p_i^{x_i-2} \cdots p_k^{x_k} \\
&=& n(n-1)p_i^2 \sum_{i=1}^k \frac{(n-2)!}{x_1! \cdots (x_i-2)! \cdots x_k!} p_i^2 \cdot p_1^{x_1} \cdots p_i^{x_i-2} \cdots p_k^{x_k} \\
&=& n(n-1)p_i^2
\end{eqnarray}
これと、V(X) = E(X(X-1)) + E(X) - E(X)^2であることを用いて分散を求める。
\begin{eqnarray}
V[X_i] &=& E[X_i(X_i-1)] + E[X_i] - E[X_i]^2 \\
&=& n(n-1)p_i^2 + np_i - n^2p_i^2 \\
&=& np_i(1-p_i)
\end{eqnarray}

共分散

期待値、分散のときと同様に計算することで、E(X_i X_j) = n(n-1)p_ip_jが得られるので、

 \displaystyle
\begin{eqnarray}
Cov(X_i, X_j) &=& E(X_i X_j) - E(X_i)E(X_j) \\
&=& n(n-1)p_i p_j - np_i \cdot np_j \\
&=& -np_i p_j
\end{eqnarray}

多項分布の例

サイコロをn回振ったときに、1の目がでる回数をX_1回。2の目がでる回数をX_2回。・・・6の目がでる回数をX_6回とする。また、それぞれの出る確率をp_i(i = 1,2,\ldots,6)とする。この時、確率ベクトル\boldsymbol{X} = (X_1,\ldots, X_6)'は、多項分布\mathrm{Multi}(n,\{p_i\})に従う。


参考文献

岩沢宏和(2012):『リスクを知るための確率・統計入門』,東京図書

「分かりやすい説明」という聞き手(読み手)の怠慢

「説明力」を求められる理系

最近、世の中から、特に理系に求められる能力として説明力がある。Wikipediaのような集合知、そこそこ専門的な知識でもググれば、その内容(理解できるかは別として)をすぐにでも確認することのできる時代に、専門用語をならべて偉そうに話す専門家の存在意義は薄れてきている(専門家が不要な訳ではない)。私自身、このことに対して、強く賛同している。分かりやすく説明できるということは、その分野に対して深い理解を持っていることの証明でもあるし、そのような説明ができる人間になりたいと考えてる。

 

氾濫する超入門書、内容の薄い○○でも分かる△△学

分かりやすさを求めるのは最早、世の中の大きな流れとなっていることが、書店に並ぶ本を見れば分かる。大きな書店に行けば、理工書がコーナーとしてあると思うが、そこに並ぶ本の中に少なからず、超入門系の本が置かれている。○○超入門!とか、文系でも分かる○○学!などといった本たちだ。目を引きやすい、いかにも優しそうなイメージの表紙に、「もう挫折しない!」みたいな帯がまかれていたりする。これらの本が一定数限りのあるならんでいるということは当然それなりに需要があるからならんでいるのだ。つまり、世の中がそのような本を求めているから、数少ない書店のスペースに、内容の薄さに対して、無駄に厚い超入門書が置かれるのである。

 

これらの本が、本当にわかりやすければいいのだ。数式を用いず、統計学ならば、各手法について、どうしてその手法なのか、どうやって使うのか、その結果は何を意味するのかを懇切丁寧に書いてくれるような書籍が本当の「分かりやすい」本なのではないかと思う。しかし、実際はどうだろう。特に私がよく見るのは統計関連のものだが、この手の本はだいたい、Excelの使い方を指南して終わる。なんか「回帰分析で予想!」みたいなことが書いてあって、Excelで一生懸命回帰分析の結果がでるまでの様子を、写真付き(これが、内容は薄く、本は厚くなる理由である)で説明するのだ。このことにどれほどの価値があるというのだろうか。正直、グーグルで検索したほうがよっぽどいい解説が出てくるだろう。そのレベルの無価値な本に、1600円、2000円なんて、どうして払えるだろうか?それ以上に、限りある書店スペースをそれらの本が占有していることが腹正しい限りだ。

「今」の入門書と「昔」の入門書の違い

分かりやすさが叫ばれるようになり、入門書のイメージも変わってきている。昔の入門書というのは「事前知識なくとも、読み進めることができる」というのが、「入門」の意味であった。例えば、多変量解析の入門書を読み進めるにあたって、行列の知識がかなり必要になってくる。昔の入門書というのは、このような必要な知識を付録として巻末に書いておいてくれる。また、当然、確率分布の定義から始まり、確率密度関数、期待値、分散共分散行列と、一つ一つ必要な知識を厳密に書かれているものであった。その分野の基本を詰めたようなものが入門書の意味するところであったのだ。それに対して、現在の入門書というのは、全く知識がない人に「なんとなくわかった気にさせる」ことが(超)入門書の意味するところになっている気がする。こういうものがあって、これはこう使います!といった、中身をそぎ落としすぎて、用語とExcelの使い方を説明する、「知ったか」を育成することを目的としているんじゃないかと疑いたくなるようなものだ。そもそも、学問というものはそれぞれの分野に一生をかける研究者がいる以上、本一冊読んだ程度で理解できるわけがない。

 

分かりやすさを求めた結果なくなるもの

分かりやすい説明をするためにはそのトレードオフとして「厳密性」が失われる。このことは多くの場合において重要ではないと考えられるが、それが失われることにより、多くの勘違いを生む結果となる。学問における定理、公式には、それが成り立つための「前提条件」というものが往々にして存在する。当然、説明する側はそのことは十分に理解しているだろうし、当然説明するときも、どこかしらで、その前提に触れていることだろう。しかし、聞き手側はどうだろうか。世の中の多くは、理系的な考え方に触れていない人が多く、そのような簡易な説明を求める層の多くはそのような人たちに占められると考えられる。そうなったときに、でかでかとプレゼンテーションで定理の内容が書かれていたのを見た聞き手が前提条件など覚えているだろうか。多くは覚えてなどいないだろう。関心があるのは、その結果にあるのだから。そうなってくると、当然前提条件が無視された定理の乱用が始まる。無価値な分析が世の中にはびこるようになる。統計等はその手法(Excelでなんかすれば結果出てくるし)よりも解釈のほうが難しい。そして、"Excelで分析した感を出した何か"を一生懸命発表するのだ。その結果が本当に正しいか、解釈があっているのかは二の次である。

 

何事も理解するためにはそれなりの努力が必要

分かりやすい説明を求めることは悪いことではない。ビジネスマンは研究者ではないので、少ない時間で概要をつかむ必要があるだろうし、研究者はそれにこたえられるほうがいいに決まっている。学生は、小難しい説明を永遠とされたらその授業に出る気など起きないし、勉強する意欲を失ってしまうだろう。

 

しかし、何を理解するにも、まっさらな状態で、なんとなく聞いていたのでは、いくらわかりやすい説明でも、理解できるわけがないのだ。その説明している人は数年から数十年をその分野にかけている人だろう。その内容の一部を短時間で、興味を持ってもらえるよう、もしくは、あなたが求めている部分だけに絞って説明してくれているのかもしれない。その努力に敬意を払い、自分なりに、理解する努力する必要がある。教えてもらうといった受け身思考ではよくない。学ぶんだという積極性が、たとえ、ガンガン質問にいくといった積極性までは持てなくとも、心持ちだけは積極でなくてはならない。そうでないと「分かりやすい」を追い求めた結果「内容の薄い」本や説明しか残らなくなるだろう(さすがにそんなことはないと思うが)し、そのような説明を聞いたり、その程度の本を読んだところで何も得るものなどない。そうならないためには、聞き手、読み手側にもそれなりの準備、努力が必要だと考える。

 

 

50年くらい前の本と現在本屋にならんでいる本を比べて、最近理論部分をしっかり扱う本が少ない(無いわけではない)気がして、ちょっとした愚痴でした。なんかすいません。

ベータ関数,ベータ分布

ベータ関数

定義

p,qが正の定数のとき、下記右辺の定積分を、p,qの関数と考え、ベータ関数と呼ぶ。

$$
B(p, q) = \int_0^1 x^{p-1} (1-x)^{q-1} dx \;\;\; (p,q > 0)
$$

ベータ関数とガンマ関数の関係

ベータ関数と、ガンマ関数の間には次の関係がある。
$$
B(p,q) = \frac{\Gamma (p) \Gamma (q)}{\Gamma (p + q)}
$$

ベータ分布

ベータ分布区間(0,1)上の確率分布であり、以下の確率密度関数によって定義される。

$$
f(x) = \left\{
\begin{array}{cc}
\frac{1}{B(p, q)} x^{p-1} (1-x)^{q-1} & (0 < x < 1) \\
0 & その他
\end{array}
\right.
$$
ベータ分布はBe(p, q)で表す。

以下X \sim Be(p,q)とする。

ベータ分布の平均,分散

\begin{eqnarray}
E[X] &=& \frac{p}{p + q} \\
V[X] &=& \frac{pq}{(p+q)^2 (p+q+1)}
\end{eqnarray}

導出

まずは平均について
\begin{eqnarray}
E[X] &=& \int_0^1 x \frac{1}{B(p,q)} x^{p-1} (1-x)^{q-1} dx \\
&=& \frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)} \int_0^1 x^p (1-x)^{q-1} dx \\
&=& \frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)} \frac{\Gamma(p+1)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q+1)} \\
&=& \frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p+q+1)} \frac{\Gamma(p+1)}{\Gamma(p)} \\
&=& \frac{p}{p+q}
\end{eqnarray}
分散を求めるに当たって、次のモーメントを求める。
\begin{eqnarray}
E[X(X-1)] &=& \int_0^1 x(x-1)\frac{1}{B(p,q)} x^{p-1} (1-x)^{q-1} dx \\
&=& -\frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)} \int_0^1 x^p (1-x)^q dx \\
&=& -\frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)} \frac{\Gamma(p+1)\Gamma(q+1)}{\Gamma(p+q+2)} \\
&=& -\frac{pq}{(p+q+1)(p+q)}
\end{eqnarray}
これより、V(X) = E(X(X-1)) + E(X) - E(X^2)から、分散は
\begin{eqnarray}
V[X] &=& E[X(X-1)] + E[X] - E[X]^2 \\
&=& -\frac{pq}{(p+q+1)(p+q)} + \frac{p}{p+q} - (\frac{p}{p+q})^2 \\
&=& \frac{pq}{(p+q)^2(p+q+1)}
\end{eqnarray}

モーメント

ベータ関数のk次モーメントを求める。
\begin{eqnarray}
E[X^k] &=& \int_0^1 x^k \frac{1}{B(p,q)}x^{p-1}(1-x)^{q-1} dx \\
&=& \frac{1}{B(p,q)} \int_0^1 x^{p+q-1}(1-x)^{q-1} dx \\
&=& \frac{B(p+k, q)}{B(p,q)} \\
&=& \frac{\Gamma(p+q)}{\Gamma(p)\Gamma(q)} \frac{\Gamma(p+k)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q+k)} \\
&=& \frac{\Gamma(p+q)\Gamma(p+k)}{\Gamma(p)\Gamma(p+q+k)}
\end{eqnarray}

p,qが正の整数のときは

 \displaystyle
E [X^k] = \frac{(p+q-1)! (p+k-1)!}{(p-1)!(p+q+k-1)!}
と書くことができる。

ベータ分布の密度関数のグラフ

ベータ分布のグラフは、パラメータごとに以下のようになる。
f:id:doratai:20170528192802p:plain
pythonで描画。以下のサイトをおおいに参考にした。
【Python】scipyとmatplotlibでベータ関数を描画 - 歩いたら休め
ソースコードは以下。

import numpy as np
import scipy.stats
from matplotlib import pyplot as plt

x = np.linspace(0, 1, 1000)
plt.xlim(0,1)
plt.ylim(0,5)
plt.xlabel(r"$x$", fontsize=20, fontname='serif')
plt.ylabel(r"$f(x; p,q)$", fontsize=20,fontname='serif')
plt.title("PDF of Beta Distribution")
params = [[3,9],[6,6],[9,3],[1,1],[1,5],[5,1],[16,16]]
for param in params:
    rv = scipy.stats.beta(param[0], param[1])
    y = rv.pdf(x)
    plt.plot(x,y,'-',lw=2,label=param)
    plt.legend(bbox_to_anchor=(1.05,1), loc='best', borderaxespad=0) #凡例を枠外表示
plt.show()
ベータ関数の特徴

ベータ関数の特徴として、上記のグラフを見ればわかると思うが、パラメータp,qの値によっていろいろな形を取る、ということがある。例えば(p,q) = (1,1)のときは一様分布になっていることがグラフからもわかる。

ベータ分布とベイズ

ベータ分布がよく出てくるのは、ベイズ統計の分野である。ベイズ統計では、事前分布と、事後分布というものを考えるが、その時の事前分布としてベータ分布はよく使われる。グラフでも示した通り、ベータ分布のグラフはパラメータによって非常に柔軟に形を変えることができる。また、グラフとパラメータの対応関係をよく見て欲しい。(p,q) = (3,9)の時、グラフは左に偏り、(p,q) = (9,3)の時、グラフは右に偏っている。つまり、p,qの比がそのままグラフに表現されるのである。このことは、確率的主観を表現する際に都合が良い。予想が6-4であるとして、期待値を0.6とするならば、「私の確信」をp:q = 6:4のベータ分布で表現できるのである。ベイズ主義は確率を「ある事象をどれくらいできるか」の指標と解釈しているため、主観的な確率というものが非常に重要になってくる。その主観的確率を表現する際にベータ分布は非常に都合の良い分布なのだ。

参考文献

松原望,縄田和満,中井検裕(1991):『統計学入門(基礎統計学I)』,東京大学出版会
日本統計学会(2013):『日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学』,東京図書

一般逆行列の定義と存在

大学教養レベルで扱う線形代数では、逆行列は「正則行列(非特異行列)」である必要があり、\mathrm{rank}がフルランクであることが逆行列を持つ必要十分条件であった。しかし、行列が特異(逆行列を持たない、フルランクでない)である場合でも、逆行列を持つように、逆行列を拡張した、一般逆行列というものが存在する。統計学の中でも多変量解析などの分野では行列を多用するため、行列の話題というのは非常関心の高いものになる。そのような分野における、一般逆行列の利用は今や日常茶飯事らしいので、定義くらいは知っておきたい。

定義

m \times n行列\boldsymbol{A}の一般逆行列(generalized inverse)とは
$$
\boldsymbol{AGA} = \boldsymbol{A}
$$
を満たす、任意のn \times m行列\boldsymbol{G}のことである。
※一般逆行列の他に擬似逆行列、条件付き逆行列という用語で呼ばれることも多い
実際、\boldsymbol{A}が非特異である場合は\boldsymbol{G} = \boldsymbol{A}^{-1}であるので、\boldsymbol{AGA} = \boldsymbol{AA}^{-1}\boldsymbol{A} = \boldsymbol{A}となっている。

一般逆行列の存在

次に気になるのが、この「一般逆行列」が存在するのかどうかである。結論としては

あらゆる行列は少なくとも1つの一般逆行列を持つ。

これは次の定理で証明される。

定理

\boldsymbol{B}を最大列階数のm \times r行列。\boldsymbol{T}を最大行階数のr \times n行列とする。この時、\boldsymbol{B}は左逆行列\boldsymbol{L}を持ち、\boldsymbol{T}は右逆行列\boldsymbol{R}を持つ。そして、\boldsymbol{RL}\boldsymbol{BT}の一般逆行列である。

証明

\boldsymbol{B}が左逆行列\boldsymbol{L}を持ち、\boldsymbol{T}が右逆行列\boldsymbol{R}を持つことは既知としよう。この時、一般逆行列の定義から
$$
\boldsymbol{BT}(\boldsymbol{RL})\boldsymbol{BT} = \boldsymbol{B}(\boldsymbol{TR})(\boldsymbol{LB})\boldsymbol{T} = \boldsymbol{BT}
$$
である。すなわち、\boldsymbol{RL}\boldsymbol{BT}の一般逆行列である。
今、任意のm \times n行列\boldsymbol{A}を考える。\boldsymbol{A} = \boldsymbol{0}であるならば、明らかに任意のn \times m行列は\boldsymbol{A}の一般逆行列である。\boldsymbol{A} \neq \boldsymbol{0}であるならば、\boldsymbol{A} = \boldsymbol{BT}を満たす最大列階数の行列\boldsymbol{B}と最大列階数の行列\boldsymbol{T}が存在する。したがって、「あらゆる行列は少なくとも1つの一般逆行列を持つ」という結論を得る。


この証明で既知として用いている部分に関しては参考文献を参照ください。

参考文献

David A. Harville,(監訳)伊里正夫(2012) : 『統計のための行列代数(上)』,丸善出版

無限のパラドクス〜数学から見た無限論の系譜〜を読んで

理工系の新書として有名なレーベルの「BLUE BACKS」の本で、足立恒雄先生の著書、「無限のパラドクス」を読みました。

 

この本は、現代の無限論にたどり着くまでの歴史的経緯について非常に簡潔に分かりやすく書かれており、高校レベルの数学の知識があれば難なく読むことが出来ると思います。

 

無限論とは別に読んでいて感動したこと(ライプニッツの夢)

この本の中盤で、ライプニッツ(1646〜1716)の話が出てきます。この本によると、論理学の分野で「AならばB」のように、一般命題に文字をわりあてるのはライプニッツが始めたことだそうです。ライプニッツが夢見たのは「全ての論証を記号化し、算術問題に還元すること」。これを実現すると、裁判などで、データを投入するだけで後は計算機が計算して公平な判決を下してくれる。このような事を夢見ていたそうです。

少し前ならば、なんて夢物語なのだろうと私も思いました。しかし、人工知能、バックデータ解析といった用語がトレンドな現代、ライプニッツの夢見たことは現実味を帯びてきています。将来的にコンピュータに仕事を奪われると予想される職業に「弁護士」が入っているのですから。

 

人工知能が判決を下す。なんか、少し前のノイタミナのアニメで「PSYCHOPATH」という作品が人気を博しましたが、それを思い出します。警官の持つ拳銃型の「ドミネーター」という武器が、対象者の犯罪係数を算出し、その数値を元にその場で刑が執行されます。この犯罪係数が高いとその場で死刑執行も行われます。この世界はコンピュータ(最後にその中身も明かされる)に支配された人間の物語とも言えます。興味がありましたら見てみてください。映画化もされていた...かと思います(多分)。

 

科学が発達し、SF作品なども豊富な現代でこそ、想像のつくような世界を400年前の偉人が夢見ていたというのは想像もつきません。現代に生きる人々の中にも、私たちが理解出来ない様な未来をイメージして研究に取り組む天才もいるのかもしれないと思うと、私たちが夢物語だと思っていることも、500年も経てば現実化してるんでしょうか。最も最近の技術革新は10年前には映画の中の事だったことが当たり前のように行われるような進歩の仕方をしているので、それ以上となるとやはり想像できません(笑)。

 

なんだか、最終的に書評でもなんでもない所に帰着しましたが、興味深い本でしたので是非オススメしたいと思います。

 

また、著者の無限に関する本として別に「無限の果てになにがあるか」というものもありますのでそちらも読んでみてください。共に興味深い内容となっています。

日記的なの「統計の誤用を防ぐ書籍」

本日新宿の紀伊国屋に立ち寄りました。現在紀伊国屋では

 

「ダメな統計学を防ぐための書籍」

 

フェア?をやってるのか、理工書の階に行くと、中央のわかりやすい所にコーナーが設置されています。そこで見つけたフリーペーパーで「ダメな統計学を防ぐための書籍11冊」が紹介されていました(まあ、そのコーナーに置いてある本なんですが)どれも欲しい本ばかりなのですが、なにぶん学生故にお金が無いため買うことが出来ません...

 

あぁ、早く就職してお金が欲しい今日このごろです。

ちなみに、そのフリーペーパーの内容はブログに掲載されてる内容なので、次のリンクをクリックしてくれれば飛びますので(∩´。•ω•)⊃ドゾー

http://id.fnshr.info/2017/01/27/no-sdw/:ダメな統計学 11冊

「ダメな統計学~悲惨なほど完全なる手引書~」レビュー

先月あたりに本屋によった際に見つけ、ずっと気になっていた「ダメな統計学~悲惨なほど完全なる手引書」をついに購入してしまいました。

 

2017年2月時点でAmazon確率・統計カテゴリ1位を獲得したベストセラーです。

 ※上記画像はAmazonにリンクしています

 

内容としては、科学者が陥ってしまいがちな統計の誤用だったり、その原因、なぜ間違いなのかについて書かれています。

 

この本の原著というか、元となっているものは英語版、日本語版共にオンラインで見ることが出来るみたい。

 

英語の場合は「Statistics Done Wrong」

日本語の場合は「ダメな統計学

 

で検索すれば出てくるので検索してください。ってか、下にリンクつけときますのでクリックすれば飛ぶようになってます。

日本語↓

id.fnshr.info

英語↓

Welcome — Statistics Done Wrong

 評価 ★★★★★

アマゾンレビューするなら私は★5つです。

 

実践向けの統計学書があふれかえる世の中で、統計の誤用という視点から、誤用に文句をいうだけでなく、原因を解説し、防ぐ方法まで説明してくれる良書です。

 

統計学という分野は非常に応用範囲の広い分野であるのですが、曖昧さをおおいに含んだ分野でもあります。その為、使い方次第で誤解を生むことも多いです。最近はデータ分析がトレンドなためか、Excelで統計みたいな、実際に使う系の本が沢山出ています。また、科学の世界でも統計は必ず使われますが、統計をキチンと学んで使われていることは少ないと思われます。統計を使う場合、既に確立された手法を用いれば良く、また、Excelのようなソフトには統計の機能がついているため、ツールとしての側面が強い気がします。そのためか統計の曖昧な部分について知らずに使い、勘違いを生む原因になっている気がします。

 

この本では、科学の世界で日常的に使われている統計における、間違いやその原因について分かりやすく解説されています。

 

この本の目次は以下のようになっています。

  1. 統計的有意性入門
  2. 検定力と検定力の足りない統計
  3. 疑似反復:データを賢く選べ
  4. p値と基準率の誤り
  5. 有意性に関する間違った判断
  6. データの二度づけ
  7. 連続性の誤り
  8. モデルの乱用
  9. 研究者の自由:好ましい雰囲気?
  10. 誰もが間違える
  11. データを隠すこと
  12. 何ができるだろうか

ここで解説される原因は、手法的な面だけにとどまりません。研究者が統計を誤ってしまう環境的背景のような面についても解説されています。また、各章の最後には「ヒント」という項目が設けられており、そこではその章で解説されたダメな統計学を回避する方法を教えてくれています。

 

また、ページ下部の注釈が結構面白く、本文よりもそっちが気になってしまったりもします。

 

解説に出てくる論文などは、参考文献のページに網羅されていますのでもっと深く知りたいという人にも親切ですね。参考文献の数は数えてみたら191個ありました(笑)。

対象読者:統計学の経験がある人

数式がガリガリ出てくる本ではなく、ほぼほぼ文章ですので、読みにくいということは全く無いと思います。読み物としての本です。ただ、統計に全く触れたことのない人が読むには、統計用語が頻繁に出てくるため厳しいと思います。

統計学を普段使いしてる人や、統計学を学んでいる学生におすすめだと思います。

 

感想

私は大学で統計学を専門にすべく勉強しています。その中でいつも考えているのは「統計学が専門」というのはどういうことかということです。統計学はどの分野でも使われています。心理や経済学の学生なんかは統計を頻繁に使うと聞きます。物理なんかもそうですね。実際、日本では統計に関する専門書は、経済学者や、心理学者、物理学者が書いているということも多いです。みんな多かれ少なかれ統計を知っているのです。そしたら、統計を専門にするとはどういうことなのか?他の分野で統計をバリバリ使っている人との差は何所に生まれるのかというのをずっと思っていました。この本はその疑問に対する一つの答えを教えてくれた気がします。統計的手法の成り立ち、理論に精通し、それぞれの手法の留意点を知り、誤りを正せるレベルが求められているんだと私は思いました。一言に統計学と言っても幅広いので全てに精通することは難しいのかもしれませんが、自分が専門とする領域を見つけ、その部分だけでもまずは上記のレベルに達することができればと思います。

 

「統計でウソをつく法」は「ダメな統計学」ででてくる関連書籍の一つです。

ガウス積分

統計学を学んでいるとよく出てくるのがガウス積分です。ガウス積分は求め方を知っていれば対して解を得るのは対して難しくは無いですが、いちいち求めるには少し手間です。なので、積分結果を覚えておく。公式的に暗記してしまうと、話がスムーズに進みますので次の公式を導出していきたいとおもいます。A,aは実数定数として
$$
\int_{-\infty}^{+\infty}e^{-A(x-a)^2} dx = \sqrt{\frac{\pi}{A}}
$$

証明)
I = \int_{-\infty}^{+\infty} e^{-A(x-a)^2} dxと置くと、I^2
$$
I^2 = \int_{-\infty}^{+\infty}\int_{-\infty}^{+\infty} e^{-A(x-a)^2 -A(y-a)^2} dxdy = \int_{-\infty}^{+\infty} \int_{-\infty}^{+\infty} e^{-A\{(x-a)^2 + (y-a)^2\}} dxdy
$$
と書くことができる。
ここで
$$
\left\{
\begin{array}{ccc}
x-a & = & r \cos \theta \\
y-a & = & r \sin \theta
\end{array}
\right.
$$
と置く。ヤコビアン
$$
J = \left|
\begin{array}{cc}
\frac{\partial x}{\partial r} & \frac{\partial x}{\partial \theta} \\
\frac{\partial y}{\partial r} & \frac{\partial y}{\partial \theta}
\end{array}
\right|
= \left|
\begin{array}{cc}
\cos \theta & -r \sin \theta \\
\sin \theta & r \cos \theta
\end{array}
\right| = r
$$
よって
\begin{eqnarray}
I^2 &=& \int_0^{2\pi} \int_0^{+\infty} e^{-A\{(r\cos \theta)^2 + (r\sin \theta)^2\}} |J| dr d\theta \\
&=& \int_0^{2\pi} \int_0^{+\infty} e^{-Ar^2} r dr d\theta \\
&=& \int_0^{2\pi} d\theta \int_0^{+\infty} re^{-Ar^2} dr \\
&=& [\theta]_0^{2\pi} [-\frac{1}{2A} e^{-Ar^2}]_0^{+\infty} \\
&=& 2\pi \cdot \frac{1}{2A} \\
&=& \frac{\pi}{A} \\
\therefore I &=& \sqrt{\frac{\pi}{A}} \;\;\;\;\; \because I > 0
\end{eqnarray}

参考文献

小寺平治(2014):『明快演習 数理統計』,共立出版